冴返さえかえ)” の例文
冴返さえかえるなどと云う時節でもないに馬鹿馬鹿ばかばかしいと外套がいとうえりを立てて盲唖もうあ学校の前から植物園の横をだらだらと下りた時、どこでく鐘だか夜の中に波を描いて、静かな空をうねりながら来る。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
で、親まさりの別嬪べっぴん冴返さえかえって冬空にうららかである。それでも、どこかひけめのある身の、しまのおめしも、一層なよやかに、羽織の肩もほっそりとして、抱込かかえこんでやりたいほど、いとしらしい風俗ふうである。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)