冥々裡めいめいり)” の例文
改宗はその人々の勝手次第なるも、かかる改宗を余儀なくせしめたる官公吏の罪冥々裡めいめいりにはなはだ重し。合祀はかくのごとく敬神の念を減殺げんさつす。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
かの写生文を標榜ひょうぼうする人々といえども単にわが特色を冥々裡めいめいりに識別すると云うまでで、明かに指摘したものは今日に至るまで見当みあたらぬようである。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此れを熟考する時は、予が如き愚なるも平生潔白正直を取るの応報として、冥々裡めいめいりに於て予を恵みたるかを覚えたり。実に予が愚なるもかかる断乎だんこたる説をたてたるを感謝す。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
その追慕とは相剋そうこくする、信孝の処理や、信雄にたいする考えも、こうして先君の位牌に冥々裡めいめいりに、お告げもし、お詫びしておけば、彼の心は信長の生ける言を聞き得たように
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然るに今や八十一歳にして既往を回顧する時は、数十回の天災人害は、思いいだすに於ても粟起ぞっきするを覚うる事あり。然れども今日こんにち迄無事に生活しるは、実に冥々裡めいめいりに或る保護にるを感謝するのみ。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)