ゑん)” の例文
いはんや彼の此行固より空嚢くうなうたりしをや。古より名士は謗訕ばうせん多し。吾人たとひ好む所に佞する者に非るも彼の為めにゑんを解かざるを得ざる也。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
しかし只一つ言ひたいのは、私が幼い時から、刑死した父のゑんそゝがうと思ふ熱烈な情に駆られて、専念に学問を研究することが出来なかつたといふ事実である。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この娘に取つては、父の命を救ふことも大事なら、家中の者から、父の命を狙つて居ると思はれて居る、許婚の秋月勘三郎のゑんそゝいで貰ふことも、更に大事だつたに違ひありません。
脊令原せきれいげん寒うして同じくゑんそそ
この禍福とそれに伴ふ晦顕くわいけんとがどうして生じたか。私はそれをきはめて父のゑんそゝぎたいのである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
顔に塗られた泥を洗ふやうに、積極的に父のゑんそゝぎたいと云ふのが、私の幼い時からの欲望である。幼い時にはかう思つた。父は天子様のために働いた。それを人が殺した。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)