其方除そっちの)” の例文
お皿が眼の前に出ているのを其方除そっちのけにして顔を直しているもんだから、その人のお蔭でコースがちっともはかどらないの、ああなられても極端だけれど
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「世話好きな男さ。自分の運動は其方除そっちのけで、ひとの送別会ばかりやっている」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
先生から指名された級長は其方除そっちのけにされて、代りに腕力のあるいたずら者が、監督官に任ぜられる。出席簿係り、運動場係り、遊戯係り、と云うような役も出来る。
小さな王国 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すると先生忽ち見惚れてしまって、茫然自失、運動会は其方除そっちのけで唯々……
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
睨まれゝば、大事な口説くどきは其方除そっちのけにして早速ぐにゃりと打ち倒れます。
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかるにアントニーはこの薄情な女王の船が自分を捨てて去るのを見ると、危急存亡の際であるにもかかわらず、戦争などは其方除そっちのけにして、自分も直ぐに女のあとを追い駆けて行きます。———
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)