公然おおぴら)” の例文
彼は、自分の結婚に対して非難攻撃が高くなればなるほど、反抗的に公然おおぴらに華美に豪奢ごうしゃに、式を挙げようと決心していた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
田舎にいる芳村のもとへ、友達がそっと電報を打ってやった時分には、磯野は公然おおぴらにお増の部屋に入り込んでいた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
忍び/\に逢うことも度重たびかさなり、今ではもう恥かしいのも打忘れ、公然おおぴらで逢い引を致しますゆえ、人のつまに掛ることも度々あり、おかめは何うか丹治と一つになりたいが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
クラスの者が公然おおぴらに占っているのをけ者の豹一はつまらなく見ていたが、ふと、クラスの者の誰もが一度は水原紀代子という名を黒板に書いているということに気がついた瞬間
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
男といふものは、女房の居る前では公然おおぴらりかねる「芸術」をそれ/″\もつてゐるものだ。芝居の真似事だらうが、逆立だらうが、女房かない不在るすになつたら、さつとおさらへをするがい。
「東京で開業なさるなら、資本ぐらいは家でどうにかしますよ。」と、その娘は伯母の前にも公然おおぴらに言っていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
教室の黒板が盛んに利用され皆が公然おおぴらに占っているのを、除け者の豹一はつまらなく見ていたが、ふと誰もが一度は水原紀代子という名を書いているのに気がついた途端、眼が異様に光った。
青春の逆説 (新字新仮名) / 織田作之助(著)