儼存げんそん)” の例文
驚くべき事は、これと同時に、現在の我が天地をおほひ尽して儼存げんそんしてゐるといふ確実な事実である。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
遜志斎集そんしさいしゅうを執ってこれを読むに、蜀王しょくおう所謂いわゆる正学先生せいがくせんせいの精神面目奕々えきえきとして儼存げんそんするを覚ゆ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
少なくとも以前儼存げんそんしていた事実だけは明らかにして、是をまだ考える力をもつ男たち、たとえばわが子や年若い弟たちだけにでも、知らせて今一度新たに考えさせることが
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今もなお儼存げんそんしているそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
真面目になれるほど、腰がすわる事はない。真面目になれるほど、精神の存在を自覚する事はない。天地の前に自分が儼存げんそんしていると云う観念は、真面目になって始めて得られる自覚だ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)