僚友りょうゆう)” の例文
「いよいよ来るねッ」丸の内の会社から退けて、郊外中野へ帰ってゆく若い勤人つとめにんが、一緒に高声器の前に駆けこんだ僚友りょうゆうに呼びかけた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
片手で木の根や枝をつかみ僅かに身体を支えて歩き悩みながら、先刻何気なく呟いた言葉の意味が執拗しつように胸にからむのを彼は感じ始めていた。アパリに居た頃の彼の僚友りょうゆうの大半は既に亡い。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
二人は元々K県出の、たいへん仲の善い僚友りょうゆうだったが、あの事件の時から一年程前に、儂もっているがAという若い女が、二人の間近かに現われてからというものは、急に二人はそむいて行った。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一同はサッとを散りました。家の中に引かえすもの、門の方へ行くもの、木立こだちの中へ入るもの——僚友りょうゆうの名を呼びつつ大捜索だいそうさくにかかりました。しかし黒田警官の姿は何処どこにも見当りません。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)