倒立さかだ)” の例文
そうして、えへへ、と実に卑しいお追従ついしょう笑いをしたようです。本当に、仕事の邪魔どころか、私は目がくらんで矢庭やにわ倒立さかだちでもしたい気持でした。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
屡々自分の家の後庭こうていに設けられた機械体操場にやって来て、一時間も二時間も独りで遊び興じながら、倒立さかだちをしたり、宙返りを打ったり、殆ど倦む事を知りませんでした。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見物人が一銭を水中へ投げると海女はたくみに拾うのだ、その時海女は倒立さかだちとなって汚水から二本の青ざめた足を突き出した、その足の裏はしなびて、うすっぺらで不気味で、青くて、堅くて動物的で
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
あんな奴と喧嘩したら、倒立さかだちしたってこっちが負けだ。
ダス・ゲマイネ (新字新仮名) / 太宰治(著)