俯向うつむけ)” の例文
……さ、お横に、とこれから腰をむのだが、横にもすれば、俯向うつむけにもする、一つくるりと返して、ふわりと柔くまた横にもしよう。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また、其外に、俯向うつむけになって居る上面、即ち背中や腰の部分に、火傷でけた所がありますネ、其地肌に暗褐色の網目形が見えます。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
私が驚いてお才の手から剃刀を取り上げた時は、ひどい血で、——お才はそのまゝ窓の中に俯向うつむけに倒れてしまつたのです。
というがはやいか、段に片足を上げて両手をく、裾を引いて、ばったり俯向うつむけのめった綺麗な体は、ゆわえつけられたように階子に寝た。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お孃樣は首に繩をつけて、部屋の眞ん中に俯向うつむけに倒れて居なさるぢやありませんか」
「ね、兄哥。死骸は仰向あふむけぢやなくて、俯向うつむけになつて居たさうぢやないか」
「自害をしたもの——ことに喉笛を切つたものは、後ろへ反るものですが、これは女だてらに大胡坐おほあぐらをかいた形になつて、俯向うつむけになつてますね——をさめさんはそんなたしなみの惡い人ぢやなかつた筈で」
「息のあるのを介抱もせずに、俯向うつむけに投り出したといふのかい」