俗謡ぞくよう)” の例文
旧字:俗謠
けれども、永久に知れずに済ますにはあまりに惜しい。俗謡ぞくように、「知れちゃいけない二人の仲をかくして置くのも惜しいもの」
鼻に基く殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そして秀吉のてかてかした顔が行列のながれにつつまれて通ると、横町や裏辻のほうで太鼓ばやしと俗謡ぞくようの節だけが聞えた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
声はすれども姿は見えずと云う俗謡ぞくようはとくに吾輩のために作った者ではなかろうかと怪しまれるくらいである。吾輩は仕方がないからただ声を知るべに行く。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
俗謡ぞくように事よせて、切々と歌い続ける妓王の姿は、並みいる人の涙をそそるものがあった。清盛も少しは気の毒に思ったらしく、ねぎらいの言葉を与えて家へ帰した。
最も同国人の讃歎さんたんするところの面白い仕事は強盗である。あるいは他の部落をおとしいれ幾人の人間を殺すことを非常な名誉と思うて居るんである。カムには強盗の歌がある。その俗謡ぞくようがなかなか面白い。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
と徳さんは四角張って俗謡ぞくようを歌い出した。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
播州ばんしゅう加古川かこがわで渡し守をしているということが世間の笑い話になってから「加古川の教信沙弥しゃみ」といえば堕落僧だらくそうの代名詞のようになって落首らくしゅ俗謡ぞくようにまでうたわれたものだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)