丹色にいろ)” の例文
そうして、その丹色にいろが、焔にあぶられた電車の架空線の電柱の赤さびの色や、焼け跡一面に散らばった煉瓦や、焼けた瓦の赤い色とえ合っていた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ふた打欠ぶっかけていたそうでございますが、其処そこからもどろどろと、その丹色にいろ底澄そこすんで光のある粘土ねばつちようのものが充満いっぱい
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
光あるコバルト色の羽をした、首ばかりのような形の鳥が、丹色にいろの小魚を長い嘴のさきについばんで、水の上を飛び渡るというような絵様えようは、いまだかつて人の空想にも浮ばなかったと思う。
屋根と屋根との間には、勾欄の灰色や壁の白色や柱・斗拱の類の丹色にいろ雲形肘木くもがたひじきの黄色などがはさまっている。そのなかでも特に丹色は、突き出た軒の陰になるほど濃く、軒から離れるほど薄くなる。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)