不明暸ふめいりょう)” の例文
その色は今日こんにちまでのように酸の作用をこうむった不明暸ふめいりょうなものではなかった。白い底に大きな動物のきものごとくどろりと固まっていたように思う。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは頭が不明暸ふめいりょうなんだからだと注意してやると、かえって吾々を軽蔑けいべつしたり、罵倒したりするから厄介です——しかしこれはここで云う事ではない。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女はただ不明暸ふめいりょうな材料をもっていた。そうして比較的明暸な断案に到着していた。材料に不足な掛念けねんいだかない彼女が、その断案を不備として疑うはずはなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すなわち途中で雨が降り出して着物がれたとか、またし暑くて途中が難儀であったとかいう意識は講演の方が心を奪うにつれて、だんだん不明暸ふめいりょう不確実になってくる。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第一言語が不明暸ふめいりょうであった。それから判切はっきり聞こえるところも辻褄つじつまの合わない事だらけだった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)