表通りから笛やかねや太鼓の、にぎやかな祭囃まつりばやしが聞えてきた。下谷御徒町したやおかちまちの裏にいたときで、秋祭の始まった晩のことだった。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
下谷御徒町したやおかちまちに住んでいる諸住もろずみ伊四郎という御徒士おかち組の侍が、よんどころない用向きの帰り路に日本橋の浜町河岸を通った。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
毎日午後に、下谷御徒町したやおかちまちにいた師匠むらくの家に行き、何やかやと、その家の用事を手つだい、おそくも四時過には寄席の楽屋に行っていなければならない。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だから、下谷御徒町したやおかちまち青石横町あおいしよこちょうに住む、お坊主頭ぼうずがしら自宅うちなんかには、各大名の羽織が何百枚となく、きちんと箪笥に整理されていたもので、まるで羽織専門の古着屋の観
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
井田は父と子で、下谷御徒町したやおかちまちで町医をやっているし、ほかに嘱託で通勤する町医が三人から五人くらいあった。
去年の秋、礼奉公も済んだので、今年は暖簾のれんを分けてもらうことにきまっていたという。この五月に、下谷御徒町したやおかちまちへ店を出したが、それには実家から多額な補助があった、ということであった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)