上総屋かずさや)” の例文
旧字:上總屋
「それはございました。御浪人の織部鉄之助様も、上総屋かずさやの番頭の金五郎さんも、若吉親方も、ここの息子の幾松さんも——」
見送の人々は勝三郎の姉ふさ、いそ、てる、勝久、勝ふみ、藤二郎とうじろう、それに師匠の家にいるかねさんという男、上総屋かずさやの親方、以上八人であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
草履をそろえたのは、迎えに来た上総屋かずさやの七造であった。街はもう黄昏たそがれが濃く、眼の前にある料理茶屋の門口にも「かね本」という掛け行燈に火がいれてあった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……まずもって船を向こう岸へ着けてよ、上総屋かずさやあたりへ引っ張り込んでよ、介抱申し上げて一汗かけば、女ってやつ他愛はねえ、九十郎さんへと云ってたやつが団八さんへと変わってしまう
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「とんでもない。——あっしはこの野郎を差し上げて、改めて上総屋かずさやの娘お袖を頂戴して参ります。上総屋の内儀から、書面を貰って参りました」
付け廻していた浪人者の織部鉄之助か、上総屋かずさやの番頭の金五郎か、大工の若吉か下剃したぞりの幾松が怪しいって言うが——
これは日本橋通三丁目の上総屋かずさやという糸屋の一人娘で唄の文句にあるような綺麗さ。佐野求馬は虚仮こけの一心で、死ぬの生きるのという騒ぎを起したのも無理のないことでした。
浪人風の男で、——顔は忘れましたが、ひたいに古傷のあったことだけ覚えています。元黒門町の上総屋かずさやへ用事があるが、どこをどう行けばいいか——と丁寧に訊くから、小戻りして教えて上げましたよ。
「親分、飯田町の上総屋かずさやが死んだそうですね」