丁稚奉公でっちぼうこう)” の例文
「へへ、何を隠しましょう、と大きく出るほどの者ではございませんが、実はあのころ山岡屋に丁稚奉公でっちぼうこうをしておりました」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ああいう手際というものは、丁稚奉公でっちぼうこうをして五年十年らなければ出来ないでしょうけれども、それ以外に何かあるかと聞かれても、私には分らない。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ルピック氏——どんな? 早い話が、靴屋へでも丁稚奉公でっちぼうこうにやってしいっていうのか?
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
私はそれを父の冷淡だと思うくらい気の廻る子供だったが、しかしそのころは大阪では良家ええしのぼんちでない限り、たいていは丁稚奉公でっちぼうこうらされるならわしだったのだから、世話はない。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それともまた、その茶わん屋にわしが丁稚奉公でっちぼうこうしていたあいだ、主人の息子であったその方が、事ごとに、幼いわしをいじめたから、その仕返しを受けはせぬかと、それを恐れてわなないておるのか。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕もまた幾ぶんかそう思うけれども、二十歳の者なら二十歳の一人前並みであるか、丁稚奉公でっちぼうこうの職にあるものならば丁稚でっちの一人前のことをなしたか、一国の宰相さいしょうなら宰相として一人前の仕事をしたか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
丁稚奉公でっちぼうこうにでも出すぐらいの考えでいなくちゃあ……
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
土方歳三が、武州日野在から出て、上野の松坂屋へ丁稚奉公でっちぼうこうに入れられたのは、十六七の頃でもあったろう。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)