一角ひとかど)” の例文
ちょうど日露戦争後の好景気に、彼は一躍戦争成金になり、一角ひとかどの実業家として、本店を大阪に移すことになったのであった。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
が兎に角、彼はまるで口笛を吹くような調子で議会政治を論じ、序でに国策の機微にも触れ、いってみれば一角ひとかどの政客の風格を身辺に漂わしていた。
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
と二人は一角ひとかど僕を遣り込めた積りで凱歌を揚げた。実は僕は藪から棒で、もう少し消息の内容を確めたかったから
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さあ、ところでどうだらう! わしは態々この男をば一角ひとかどの人間なみに、そつと傍らへ引つぱり寄せてな
二人ふたりのゐる所は高く池のなかに突き出してゐる。此をかとは丸でえんのない小山が一段低く、右側みぎがはを走つてゐる。大きな松と、御殿の一角ひとかどと、運動会の幕の一部と、なだらな芝生が見える。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どれも、これも、暗い顔をして俯向うつむいて歩く所は一角ひとかどの哲学者めいて居るが、何も文科の生徒ばかりではない。こう云う天気に黄昏たそがれの街を歩くと、大概な人の顔は哲学者づらになって居る。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
して見ると、此の書が普通の小説と、どういう風に違つてゐるといふ箇所を擧げる丈でも既に一角ひとかどの批評である。決して無益な事とは思はれない。それを極粗末ながら一言で述べて見たい。
「額の男」を読む (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「何うも有難うございました。お蔭で一角ひとかどの炭坑通になりましたよ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
大きな松と御殿の一角ひとかどと、運動会の幕の一部と、なだらかな芝生が見える。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)