一盞いつさん)” の例文
今はたゞ料理菊でもない抛つたらかし咲かせの白き小菊の一二輪を咬んで一盞いつさんを呷ると、苦い、苦い、それでも清香歯牙に浸み腸胃に透つて、味外の味に淡い悦びを覚える。
菊 食物としての (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「げに、酒は美人に限ること古今相同じでげす」と丸井玉吾既に一盞いつさんを傾け尽くしつ「イヤ、どうも御禁酒のかたの代理と云ふ法もないわけでげすな、先生、飛んだ失礼を——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
此時一盞いつさん無くんば、何を以てか平生を叙せん。 (白居易)
津軽 (新字旧仮名) / 太宰治(著)