一点張いってんばり)” の例文
いろいろに工夫を積んで自分に愛想あいその尽きるほどひねくって見たが、とうてい思うようにまとまらないと云う一点張いってんばりに落ちて来た時に——やっと気がついた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かつまた、これほど空想的でなかったにしろ、極めて平凡な常識一点張いってんばりの実業家気質から見れば二葉亭の実業論が非常な空想を加味していたのは争われなかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
大原君が洋行から帰って来て天下に家庭教育の改良を呼号こごうする時分はまた大食一点張いってんばりの大原せいでないぜ。世間は必ず家庭の救世主を以て大原君を崇拝するだろう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
むしろ元禄に変化したるだけの変化さへ失ひ、「何や」「何かな」一点張いってんばりの極めて単調なる者となりをはりて、ただ時に檀林一派及び鬼貫おにつららの奇をろうするあるのみ。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
村の百姓どもの小屋にしても、まったく素晴らしい骨組で、壁に煉瓦を使ったり彫刻の飾りをつけたり、その他くだらない工風が何一つしてない代りに、すべてが頑固一点張いってんばりに仕上げてある。
津田が人情一点張いってんばりでそれを相手にする気色けしきを見せないと、彼女はもう一歩先の事まで云った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)