一攫千金いっかくせんきん)” の例文
「お次は相場の当る法、弁ずるまでもありませんよ。……我人われひとともに年中おけらでは不可いけません、一攫千金いっかくせんきん、お茶の子の朝飯前という……次は、」
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そんなケチ臭いことを言うナ。そりゃ、今日の吾儕われわれの境涯では、一月の月給が一晩も騒げば消えて了うサ。それが、君、何だ。一攫千金いっかくせんきんを夢みる株屋じゃないか——今夜は僕がおごる」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
予もまた今年の五月の初め、漂然ひょうぜんとして春まだ浅き北海の客となった一人である。年若く身はせて心のままに風と来り風と去る漂遊の児であれば、もとより一攫千金いっかくせんきんを夢みてきたのではない。
初めて見たる小樽 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
そこで、心得のある、ここの主人あるじをはじめ、いつもころがり込んでいる、なかまが二人、一人は検定試験を十年来落第の中老の才子で、近頃はただ一攫千金いっかくせんきんの投機をねらっています。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)