一手いって)” の例文
何しろ江戸中期この方、日本中の販路をほとんど阿波の国一手いってで引き受けていたのですから、如何に仕事が盛であったかが分ります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
人参にんじんの栽培は木曾地方をはじめ、伊那、松本辺から、佐久の岩村田、小県ちいさがたの上田、水内みのち飯山いいやまあたりまでさかんに奨励され、それを尾州藩で一手いってに買い上げた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
子供の未来の幸福を一手いってに引き受けたような自信にちたその様子が、近づくべからざる予言者のように、彼には見えた。彼は想像の眼で見る父に向って云いたくなった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一代の画工が精力を消耗しょうこうして変化を求めた顔でも十二三種以外に出る事が出来んのをもってせば、人間の製造を一手いって受負うけおった神の手際てぎわは格別な者だと驚嘆せざるを得ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)