一寸々々ちよいちよい)” の例文
時としては、従同胞いとこ共が私の家へ遊びに来る。来るといつても、先づ門口へ来て一寸々々ちよいちよい内を覗きながら彷徨うろうろしてゐるので、母に声を懸けられて初めて入つて来る。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『然う然う、其麽そんな癖がありましたね。一体一寸々々ちよいちよい奇抜な事をやり出す人なんで、書く物も然うでしたよ。恁麽こんな下らん事をと思つてると、時々素的な奴を書出すんですから。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其以後それからといふもの、私はお和歌さんが好で、母には内密ないしよ一寸々々ちよいちよい、東の店に痰切飴たんきり氷糸糖アルヘイを買ひに行つた。眇目の老人さへゐなければ、お和歌さんは何時でも負けてくれたものだ。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私も一寸々々ちよいちよい一緒に行かぬではなかつたが、怎してか大抵一人先に帰つて来るので、父の仕事場にしてある店先の板間に、竹屑やら鉋屑かんなくづの中に腹匍はらばひになつては、汗を流しながら読本を復習さらつたり
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)