一剋いっこく)” の例文
五十男の一剋いっこくな松五郎は、本当に鋏ぐらいは新助に突っ立て兼ねません。佐々村佐次郎、それを押えるのが本当に精一杯でした。
雪、虚勢はせ。なあ、貴さまと、拙者、あの一剋いっこくの一松斎の門では、一つ鍋の飯を食うたことがあるのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
時々は甘えて煙草をくれと云う。此家うちではまぬと云っても、忘れてはまた煙草をくれと云う。正直の仙さんは一剋いっこくで向張りが強く、智慧者ちえしゃの安さんは狡獪ずるくてやわらかな皮をかぶって居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
石が大きければ水煙もおびただしいと云った様なもので、傍眼わきめには醜態しゅうたい百出トルストイ家の乱脈らんみゃくと見えても、あなたの卒直そっちょく一剋いっこくな御性質から云っても、令息令嬢達の腹蔵ふくぞうなき性質から云っても
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)