“おちかた”の漢字の書き方と例文
カタカナ:オチカタ
語句割合
遠方100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
今年の最初の雪だというに、江戸に珍らしく五寸も積もり、藪も耕地も白一色、その雪明りに照らされて、遠方おちかた朦朧もうろうと見渡されたが、命ある何物をも見られなかった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは寂しい秋の午前あさであった。こまかい霧雨が壁に降りかかり、すべてのものが——空も建物も裸になった樹々も、霧にとざされた遠方おちかたも——おしなべて灰色に見えた。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
夕靄がけぶるように野末にたちめ、ものの輪廓が、ほの暗い、はるか遠方おちかたにあるように見えた。道ばたに三本立っている見あげるようなもみの木までが、まるで泣いてでもいるようにうるんで見えた。
親ごころ (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)