肉桂樹にっけい
枳殻の生垣に、烏瓜の赤い実が鮮やかであつた。百舌鳥が栗の梢で、寒空を仰いで激しく友を招んでゐた。武兵衛さんが、曲つた腰を伸して、いつまでも、鳥の声の方を見あげてゐた。彼の口から立ちのぼる呼吸が、ふわふわとする煙であつた。——武兵衛さんのこと …