すべから)” の例文
全く美化されたね、俺も沙漠先生も、殊に小便がだ。小便をするはすべからく此時に於てす可しだ。名月、沙漠男、慥に俳句にはなるよ。
俺の記 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
弘前藩はすべからく当主順承ゆきつぐと要路の有力者数人とを江戸にとどめ、隠居信順のぶゆき以下の家族及家臣の大半を挙げて帰国せしむべしというのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「諺にも醜婦総てすべから姑障こしょうを見るべしということがあります。ここにそっとしているのは、将来のはかりごとじゃないのです。」
連城 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
生きた生活を生きた生活として取扱うところに任務のある歴史家は、すべからくこれらの誤謬と妄想とを世間から排除することに勉むべきである。
黄人こうじんの私をして白人の黄禍論こうかろんを信ぜしめる間は、君らはすべからく妻を叱咜しったし子をしいた太白たいはくを挙げてしかして帝国万歳を三呼さんこなさい。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
婦人の上はしばらく。男子にして修飾を為さんとする者はすべからく一箇の美的識見を以て修飾すべし。流行を追ふは愚のきわみなり。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
高山樗牛が「吾人はすべからく現代を超越すべし」と平気で云って居るのも、彼の時代の中学生的雰囲気をよくあらわして居る。
「二毛暁に落ちて頭をくしけづることものうし、両眼春くらくして薬を点ずることしきりなり」「すべからく酒を傾けてはらわたに入るべし、酔うて倒るゝもまた何ぞ妨げん」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
去る八月以来公武合体が実現している今日となっては、すべからく皇命を奉じ、幕府をたすけ、上下協力して国論を定め、もって攘夷の効を奏すべきである
新撰組 (新字新仮名) / 服部之総(著)
墓はあの通り白い大理石で、「吾人はすべからく現代を超越せざるべからず」が、「高山林次郎たかやまりんじろう」という名といっしょに、あざやかなのみあとを残している。
樗牛の事 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
モーゼの十誡第七条の文句の、否定にす可き所を肯定して了ったので「汝等すべからく姦淫を犯す可し」となったのである。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
「道義きもを貫き、忠義骨髄にち、ただちにすべからく死生の間に談笑すべし」と悠然として饑餲きかつに対せし蘇軾そしょくを思え、エレミヤを思え、ダニエルを思え
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
いやしくも、本当に小説家になろうとする者は、すべから隠忍自重いんにんじちょうして、よく頭を養い、よく眼をこやし、満を持して放たないという覚悟がなければならない。
今日こんにち、君を送る、すべからく酔いを尽すべしイ……明朝、相憶あいおもうも、みち、漫々たりイ……じゃないか、アハハハハ……」
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「君に勧む、金縷きんるころもを惜むなかれ。君に勧む、すべからく少年の時を惜むべし。花有り折るにへなばただちに折るし。花無きを待つてむなしく枝を折ることなかれ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
熱するというのはすなわち感情の昂奮こうふんするいいである。しかしことにあたるか否かを判断するときは、すべからく感情をけ冷静に是非曲直ぜひきょくちょくの判断を下すを要する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
たとえば、自分は彼が「衣糧にわずらふな」と言い、「すべからく貧なるべし、財おほければ必ずその志を失ふ」
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
かつテ山東洋ニ問フテ曰ク、我、君ニつかフルコト三年、技進マズ、其ノ故如何。洋子のたまはク、吾子ごしすべからク多ク古書ヲ読ミ、古人ト言語シテ以テ胸間ノ汚穢おえヲ蕩除スベシ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うむ、曲は『山姥やまうば』だな。……唄声にも乱れがない。ばちさばきもあざやかなものだ。……いい度胸だな。感心な度胸だ。人はすべからくこうなくてはならない。蠢動するばかりが能ではない。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
待っていてくれちゃ困るけれど、理窟は先ず斯うしたものさ。一に辛抱、二に長生ながいき。自分が死んでしまったんじゃお話にならない。すべからく大いに加餐かさんして、出世の資格を拵えるんだね
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あるいほかの例をもってするならば元来変態心理と正常な心理とは連続的でありますから人類はすべから瘋癲ふうてん病院を解放するか或はみんな瘋癲病院に入らなければいけないと斯うなるのであります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これはもう周囲まわりものうよりみとめているところで、只今ただいまもドクトル、エウゲニイ、フェオドロイチがうのには、貴方あなた健康けんこうためには、すべから気晴きばらしをして、保養ほようせん一とせんければならんと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
文学を志す者は、すべからく従来の、伝統的な悪風を捨てて、「天才」の表面的模倣に暇を潰すよりも、科学を研究すべきである。歴史小説を書く者は、小説家であると同時に史家でなければならぬ。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
すべからみずから事物の実際を観よ、ヴィルヴァ樹一たび落ちて林中獣類むなしと。
すべからく月の一句のあるじたれ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
すべからく一死をつべし
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
此の如きの輩もと学術の何たるを知らざるものすべからくその面に唾すべしといへどもまた勢のむべからざるなきに非ず。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
左様な美女をよぼ/\の老翁ろうおうや位の低い平中ごときにまかしておくと云う手はない、すべから乃公だいこうが取って代るべしである、と、ひそかに野心を燃やしていたところへ
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ダ風流/ギル時ハ感ズルヲメヨ白河ノ暮/到ル日ハすべからルベシ松島ノ秋/語ヲ寄セヨ厳冬大雪多カラン/一領ノ白狐ノ裘無カル可ケンヤ〕となすものを
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
雲照うんせうさへ坊主の羅切らせつを聞いては、「男根だんこんすべから隆隆りゆうりゆうたるべし」と、弟子でし共に教へたと云ふではないか?
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ヨク菜ヲ治スル者ハすべからク……一物ヲシテ各々おのおの一性ヲ献ジ、一椀ヲシテ各々一味ヲ成サシム……」
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
沒却哲理は詩のすべからく備ふべき性なり。シエクスピイヤの戲曲いかでか沒却哲理ならざらむ。逍遙子理想といふ語を哲學上所見の義に用ゐむ限は、沒理想の名目、取除けずといへども可なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
巌谷いはや紹介せうかいで入社したのが江見水蔭えみすゐいんです、この人は杉浦氏すぎうらし称好塾せうこうじゆくける巌谷いはや莫逆ばくぎやくで、素志そしふのが、万巻ばんくわんの書を読まずんば、すべから千里せんりの道をくべしと、つねこのんで山川さんせん跋渉ばつせふ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すべからく闊達自在にふるまって然るべしという見解を、今日示している。
プロ文学の中間報告 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
羅摩なお不承知で、私陀永く楞伽に拘留された間一度も敵王に穢された事なくば、すべからく火に誓うて潔白を証すべしと言い張る。私陀固くその身にあやまちなきを知るから、進んで身を火中に投ぜしも焼けず。
これはもう周圍まはりものうよりみとめてゐるところで、只今たゞいまもドクトル、エウゲニイ、フエオドロヰチがふのには、貴方あなた健康けんかうためには、すべから氣晴きばらしをして、保養ほやうせん一とんければならんと。これ實際じつさいです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
男子すべからくもう少し見識があって欲しい。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たゞ、肺病で涙脆い青年の書いた一種の美文と云ふに止まる。「吾人はすべからく現代を超越せざるべからず」
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すべからくそのような文壇を解消せよと云うのである。
今日の文学の展望 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
すべからく自重して時のいたるを待つべきである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すべからく世紀の子たれ。松・平・の一属。