なが)” の例文
とゞまりしと雖も小夜衣の事を思ひきりしに非ず只々たゞ/\便たよりをせざるのみにて我此家の相續をなさば是非ともかれ早々さう/\身請みうけなし手活ていけの花とながめんものを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
入日いりひの落るを見て北條が歌を詠じたと云う……えゝ何とか云った……オヽ……「敵は打つ心まゝなる鴻の台夕日ながめしかつ浦の里」とんだと申すて」
これはここへ来てからの、心覚えの童謡わらわうたを、明が書留めて朝夕ちょうせきに且つ吟じ且つながむるものだ、と宵に聞いた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これなどは明らかにしず伏屋ふせやの最も凡庸なる者の生活であって、和歌にはすでに見離され、俳諧はなおその客観の情趣を、取り上げてあわれとながめているのであった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
つまの花瀬は最前より、物陰にありてくだんの様子を、残りなくながめゐしが。身は軟弱かよわ雌犬めいぬなり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
丸窓まるまどにうつるまつのかげ、幾夜いくよながめてつきやみになるまゝにいとこゝろそのとほり、うちあけてはひもならぬ、となりひと素性すじやうきゝたしとおもふほど、意地いぢわろくれもげぬのかそれともにらぬのか
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
定めしおれの所業しわざをば不審もして居たろうがまあ聞け、手前の母に別れてから二三日の間実は張りつめた心も恋にはゆるんで、夜深よふかに一人月をながめては人しらぬ露せまそでにあまる陣頭のさびしさ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
人の花とながめさせんよりはと無分別を起し、曾根崎の途中でその女を一刀に斬り殺し麦飯屋の下に隠れたが、翌夕腹へって這い出で食を乞う所を召し捕られた(『伝奇作書』初篇上)。
そのかみ、神功皇后韓国からくにをことむけたまひ、新羅の王が献りし貢の宝を積みのせたる八十艘のかぢを連ねてこの海に浮べるを憶ひおこし、はしなくも離れ小島の秋かぜに荻の花の吹きちるをながむる身は
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ぬいながむるに是も亦違もなき天下三品さんぴんの短刀なりと拜見しをはりて大膳にもどし成程御證據の二品は慥なれ共天一坊殿に於ては僞物にせものに相違なしといふ此時このとき天忠席を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
梓が上京して後東京の地において可懐なつかしいのは湯島であった。湯島もその見晴みはらしの鉄の欄干にって、升形の家が取囲んでいる天神下の一かくながめるのが最も多く可懐しかった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かめす花見ても知れおしなべてめづるはすつる初めなりけり」という歌の心は、ながめは誠にどうも総々ふさ/\とした此の牡丹は何うだい、いねえ水を上げたところは、と珍らしがって居りますが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小簾をすのすきかげ隔てといへば、一重ばかりもましきを、此処十町の間に人目の関きびしく成れば、頃は木がらしの風に付けても、散りかふ紅葉のさま浦山しく、行くは何処どこまでと遠くながむれば
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見廻し拔放ぬきはな元末もとすゑ倩々つく/″\ながめ是ぞ此身のえてつゆ白刄しらはと成けるが義理ぎりある養父やうふ忠々敷まめ/\しきの久八を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それけれどれほどまでにおぼしめしれたものらばとひて斷念あきらめのつくはづなし我身わがみねがひがかなへばとて現在げんざいこゝろりながらそれもつらしれもしとまよひにこゝろ夕暮ゆふぐれそら八重やへつく/″\ながむれば明日あす晴日はれひ西にしかたのみくれなゐのくもたなきぬ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)