見返みかえ)” の例文
叔父おじさんは、博物館はくぶつかんほう名残惜なごりおしそうに、もう一見返みかえったが、ついおいあとからついて美術館びじゅつかんぐちをはいってゆきました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いいえ、これでも一本立ち、お前さんも稼業人かぎょうにんになるなら覚えておおき、女掏摸すり見返みかえりおつなというものさ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岡焼半分おかやきはんぶん悪刷わるずりにしても、あんまりはなしちがぎると、千きちおもわずおに七のかお見返みかえした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ただそういう中で一つ目の方は行われている区域が広く、見返みかえばばの方は大分狭いらしいので、後者が後に起りかつ一方の暗示によって、誘致せられたかと思われるだけである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その上、「もしか若者わかものがかわって、うま死骸しがいなんぞとりかえてはそんだとかんがえて、ぬのかえしにでもるとたいへんだ。」とおもって、あとをも見返みかえらずに、さっさとけて行ってしまいました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おい、きみ。」と、おまわりさんは、うしろから、二人ふたりめました。新吉しんきち正二しょうじも、びっくりして、おまわりさんのほう見返みかえりました。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
その姿すがた一目ひとめただけで、だれだっておどろいてうしなわずにはいられません。けれども頼光らいこうはじめ六にん武士ぶしはびくともしないで、酒呑童子しゅてんどうじかおをじっと見返みかえして、ていねいにあいさつをしました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
見返みかえやなぎ
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮田みやたくん。」と、かれは、まえへいく少年しょうねんこえをかけました。少年しょうねんは、まって、哲夫てつお見返みかえると、にっこりわらいました。
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてみせてから、もう一自分じぶんいた看板かんばん見返みかえしていたが、いつしかかんがんで、地面じめんくぎづけにされたように、じっとしてうごかなかった。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いや、おれたちのからだ弾丸だんがんになるのだ。みんなててしまえ!」と、老兵士ろうへいしは、くちまでたが、無理むりに、だまって、じっとわか兵士へいしかお見返みかえしました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くにをてから幾月いくつきぞ、ともにでこのうまと、めてすすんだやまかわ……。ほんとうに、そうだった。みんながうま見返みかえり、見返みかえり、きながらいったよ。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このボタンをひとは、だれでもちょっとまって、じっとをそのうえとさないものはありませんでした。らないひとは、だまって見返みかえってゆきました。
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
「みつさん、もうぼくばんにいないかもしれない。」と、幸吉こうきちは、じっとみつかお見返みかえすと、みつも、ちょっとおどろいたかおつきをしたが、すぐにいきいきとわらって
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、三にん口々くちぐち光治こうじをののしりながら、した見返みかえってあっちへいってしまいました。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、みなみそら見返みかえりながら、太陽たいようかって威嚇いかくしました。すると無数むすうのおおかみは、ひとしく太陽たいようかって、とおぼえをしたのであります。そのこえは、じつにものすごかった。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、未熟みじゅく三味線しゃみせんいて、ひとさまにかして、いくらかなりとおかねをもらおうとおもうのでありますが、だれも、見返みかえるものがない。かんがえれば、それがほんとうなのかもしれません。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)