)” の例文
葉子は狂女のように高々たかだかと笑った。岡は葉子の物狂おしく笑うのを見ると、それを恥じるようにまっになって下を向いてしまった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そしてだらしなくはだかったその胸の、黒く見える傷口からは彼が動く度に、タラリタラリとまっな血が、白い皮膚を伝って流れていた。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
馬喰町の佐野屋の二階から見おろすと、隣りの狭い庭に一本の桃の花が真っに濡れて見えた。どこかで稽古三味線けいこじゃみせんの音が沈んできこえた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三上淡路守みかみあわじのかみというやはり毛利家の一将。駈け寄って来て、岸から槍をほうりつけた。大鯨たいげいを突いたもりのように、槍は真っな水の中に立った。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
練習場の入口におしよせる観衆のなかから、くちびるほおな、職業女プロスチチュウトを呼びだして、近くの芝生でいちゃついていた、外国の選手達もみました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
西にしそらはいま、みどろなぬまのやうに、まつゆふやけにたゞれてゐた。K夫人ふじんつて西窓にしまどのカーテンをいた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
そこへ「只今ただいま帰りました」と、お春が汗でになった顔をして、明石縮あかしちぢみをよれよれにして這入はいって来た。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
浜路、頬でも染めたかしら? いやいや赧くはならなかったが、それこそ火のようにになった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
末松夫人は酸漿ほほづきのやうにになつた。そして泣き顔をして両手で老人を拝むやうな真似をした。
まつ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
耳朶みみたぶにして、お蔦は、外へ出て行った。すぐ、隣家となりの格子が鳴り、がたぴしと、壁越しに、箪笥たんすかんの音があらっぽく聞こえてくる。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貞之助はに上気して口惜くやし涙を浮かべている妻の顔に、いつもこんな表情をして姉妹喧嘩げんかをしたであろう遠い昔の、幼い日の姿をなつかしく想いやった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いくら、になって云い合っても、所詮は水掛け論で果てしが付かなかった。かれら三人の所得は伝吉の手に渡された熊の皮一枚に過ぎないことになってしまった。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
明らかに葉子がまっになって顔を伏せるとばかり思っていたらしく、居合わせた婦人たちもそのさまを見て、容貌ようぼうでも服装でも自分らを落とそうとする葉子に対して溜飲りゅういん
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
まつ鷄冠とさか
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
そのとき、盛遠のひとみは、つちくれに近い亡骸なきがらから、突然、はるかな空へ、ひかれていた。——いつか、かれの真正面に、まっな太陽が、さし昇っていた。
と、寸の短い小さな手の、それでも人並ひとなみつめに染めてある指で、ハンドバッグから名刺を出した。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それがこの才はじけた童女を、ひざまでぐらいな、わざと短く仕立てた袴と共に可憐かれんにもいたずらいたずらしく見せた。二人ふたりは寒さのためにほおをまっにして、目を少し涙ぐましていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
な桃畑も黒く見える。負傷者の群れがそこにうめきあっていた。負傷した将兵は半分気がちがっているように
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
声かかってから二、三分もたった頃にやっと襖がごそッいうて、そこが少しずつ、一寸二寸ぐらいずつ開いて、眼エのまわいけに泣きらした光子さんが出て来ました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ふと、眼をこすって、眸を上げると、な夜明けの太陽が、伊賀、大和の連峰を踏んで、昇っていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女はそれをこらえようとしてに顔を上気させながら
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その春の陽が、真っに沈むころ、奥州船は、右を見ても左を眺めても、あしばかりな入江にはいっていた。怖しく広い川幅を、帆を垂らして徐々にさかのぼって行く——
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山つつじがに燃えている。——からんとして空は青い。枯草の下には、深山みやますみれが匂っていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見るからに業刀わざものと思われ、送りの人々の眼をみはらせたが、より以上、その長剣がすこしも不似合でない彼のすぐれた骨がらと、猩々緋のなのと、色の白い豊頬ほうきょうおもて
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう、桜は八重も、散りしいて平庭の泉石の陰をつづって、つつじが真っに咲いていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青い縞目しまめを縫って飛ぶ鳥影のような武蔵の姿に、チカッと、金色こんじきの光がねた。朝の太陽がいつのまにか叡山えいざん連峰の山間やまあいから、つとくし形のかどをあらわしているのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧子ねねは顔をにしてしまい
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お通は、真っになって
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)