砂煙すなけぶり)” の例文
すさまじくいなゝいて前足まへあし両方りやうはう中空なかぞらひるがへしたから、ちひさ親仁おやぢ仰向あふむけにひツくりかへつた、づどんどう、月夜つきよ砂煙すなけぶり𤏋ぱツつ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
乗り合いは切歯はがみをしつつ見送りたりしに、車は遠く一団の砂煙すなけぶりつつまれて、ついに眼界のほかに失われき。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜があけると、この砂煙すなけぶり。でも人間、雲霧を払った気持だ。そして、赤合羽の坊主の形もちらつかぬ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しばらくして突立つったって、わってッて追い駆けると、もうわいわいという騒ぎで、砂煙すなけぶりが立ってまさ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みち大畝おほうねりに、乗上のりあが乗下のりさがつて、やがて、せまり、やまきたり、いはほちかづき、かはそゝいで、やつと砂煙すなけぶりなかけたあたりから、心細こゝろぼそさがまたした。はいまみどりに、ながれしろい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしのはさきつたが、——説明せつめいくと、砂煙すなけぶりがすさまじいので、すくなくとも十ちやうあまりは間隔かんかくかないと、まへすゝむのはまだしも、あとくるまくちかないのださうである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とほあと見返みかへれば、かぜつた友船ともぶねは、千すぢ砂煙すなけぶりをかぶつて、みだれて背状うしろさまきしなつて、あたか赤髪藍面せきはつらんめん夜叉やしやの、一水牛すゐぎうくわして、苜蓿うまごやしうへころたるごとく、ものすさまじくのぞまれた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)