目出度めでたく)” の例文
減らして目出度めでたく大団円になるじゃないか、俺だって青い壁のはてまで見たかったんだが、そのうちに目が覚めたから夢も覚めたんだ
火星の芝居 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
八重花花魁が此の月末にはお目出度めでたくスーッとお身請になりますから、花魁が素人に成っちまって、あとへ下のがニューッと出る処を
はっきりしてら! 全く元旦だなんて、搾取国のプロレタリアートにとって目出度めでたくもへったくれもないわけだ。闘争の新年度第一日ってもんだ。
正月とソヴェト勤労婦人 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
花園伯爵からは、目出度めでたく退院したという礼状が来た。蘭堂はもう我慢が出来なくなって、伯爵邸を訪ね、久し振りで京子の顔を見、声を聞いた。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それを無理に御目出たがろうとすると、所謂いわゆる太倉たいそうぞく陳々相依ちんちんあいよるというすこぶ目出度めでたくない現象に腐化して仕舞しまう。
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するうち、演出家を恋人にしている亀子という仲間の女がおなかを大きくさせた。そして座長の人気役者が媒介なこうど役を買って出て目出度めでたく結婚させることになった。
心づくし (新字新仮名) / 永井荷風(著)
以手紙てがみをもつて申上候貴兄きけい彌々いよ/\安全あんぜん醫業いげふ被成なされ目出度めでたくぞんじ奉つり候然れば此方このはう八年まへ近邊きんぺんよりの出火しゆつくわにて家財道具を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
車を横に押し親父おやじを勘当しても女房に持つ覚悟めて目出度めでたく婚礼して見ると自分の妄像もうぞうほど真物ほんものは面白からず、領脚えりあし坊主ぼうずで、乳の下に焼芋のこげようあざあらわれ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
残暑きびしくそうろうところ、御地皆々さまには御機嫌ごきげんよく御暮し遊ばされ候由、目出度めでたくぞんじあげまいらせ候。ばば死去の節は、早速雪子御遣おつかわし下され、ありがたく存じ候。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と頼めばやがて持ちきたる膳部の外に摺芋すりいも鷄卵たまごを掛けたるを下物さかなとして酒を持ち來り是は明日あす峠を目出度めでたく越え玉はんことをことほぎたてまつるなり味なしとて許されて志しばかりを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
布哇寄港祝砲と共に目出度めでたく桑港サンフランシスコを出帆して、今度は布哇ハワイ寄港とまり、水夫は二、三人亜米利加アメリカから連れて来たけれども、甲比丹カピタンブルックはらず、本当の日本人ばかりで
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし先生方は楽書を極くお目出度めでたく文字通りに解釈して、のこのこやって来たのだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三人が一心になって働いた揚句は、地球でいえば十八日目に、目出度めでたく出来上った。
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「とうとうお目出度めでたくなったそうだな、ほら、あの槙町まきちょう二弦琴にげんきん師匠ししょうも。……」
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは春琴が十七歳の五月で佐助は大阪に居残り女中二人が附き添って十月まで有馬に滞在たいざい目出度めでたく男の子を生んだそのあかぼうの顔が佐助にうり二つであったとやらでようやくなぞが解けたようなものの
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
百年のよわいは目出度めでたく難有ありがたい。然しちと退屈じゃ。たのしみも多かろうが憂も長かろう。水臭い麦酒ビールを日毎に浴びるより、舌を焼く酒精アルコールを半滴味わう方が手間がかからぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
文「どう致して、目出度めでたく御出牢で御祝ごしゅくし申す、どうしても気性だけあって達者でお目出たい」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
千代香はいよいよ素人しろとのお千代になって、ここに目出度めでたく神楽坂裏の妾宅に引越し、待合松風の世話で来た五十ばかりの老婢ばあやを相手に一日ごろごろ所在なく暮す身分となった。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
八百兩にて請出うけいだよめとなし吉之助きちのすけ勘當かんだうをも免し目出度めでたく夫婦ふうふとして喜八夫婦には横山町よこやまちやう角屋敷かどやしき穀物店こくものみせに三百兩つけあたへ家主平兵衞へいべゑへはみぎ横山町よこやまちやう地面ぢめん間口まぐちけん奧行おくゆき十八けん怙劵こけん種々いろ/\音物いんもつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
目出度めでたく三三九度の盃も済み、藤原が「四海なみしずかに」とうたい、媒妁はよいうちと帰りました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「新年の御慶ぎょけい目出度めでたく申納候もうしおさめそろ。……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お恨みなさるゝな此久八めが申すこと今一通り御聞下され此間より度々たび/\に御異見いけん申上たる通りねがふ事では御座りませんが今にも萬一ひよつと大旦那がお目出度めでたくなられたなら其時こそは此大このだいまいの御身上しんしやう悉皆若旦那の物となる假令たとへ然樣さやうに成すともわづかの事には
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
丁度あの鳶頭が来た翌日あくるひでした、吉原なか彼女やつ駈落かけおちと出懸けやしたがね、一年足らず野州やしゅう足利あしかゞで潜んでいるうちにかゝあは梅毒がふき出し、それが原因もとで到頭お目出度めでたくなっちまったんで
目出度めでたいものはいもの種」と申す文句でございます。「目出度いものは芋の種葉広く茎長く子供夥多あまたにエヽ」と詰らん唄で、それを婆アさんが二人並んで大きな声で唄い、目出度めでたくしゅくして帰る。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)