さかひ)” の例文
けれども赤彦君は、このごろ眠りと醒覚せいかくとのさかひで時々錯覚することがあつた。ゆうべあたりも、『おれのひざに今誰か乗つてゐなかつたか』
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
四人は翌二十日に河内かはちさかひつて、食を求める外には人家に立ち寄らぬやうに心掛け、平野川に沿うて、間道かんだうを東へ急いだ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
街の傍に棄てられて、今はさかひの石となりたる、古き柱頭も、わがためには、神聖なる記念なり、わがためには、めでたき音色に心を惱ますメムノンが塔なり。
武州相州のさかひ、信濃坂に夜毎にはやし物の音あり。笛鼓ふえつづみなど四五人声にして、中に老人の声一人ありける。近在または江戸などより、これを聞きに行く人多し。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
住むべき家の痕跡あとかたも無く焼失せたりとふだに、見果てぬ夢の如し、ましてあはせて頼めしあるじ夫婦をうしなへるをや、音容おんようまぼろしを去らずして、ほとほと幽明のさかひを弁ぜず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お節は両手をうしろの首筋の方へ廻して細い黄楊つげくしで髪をときつけながら立つて居た。物置の戸口と柱一つをさかひにして小窓が切つてある其外には手洗鉢てうづばちが置いてある。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
追放つゐはうくからは、父母ちゝはゝもチッバルトもロミオもヂュリエットも皆々みんな/\ころされてしまうたのぢゃ。「ロミオは追放つゐはう!」その一言ひとことひところちからにははてはかりきりさかひいわいの。
私はその時通り庭の土間を上つた所に立つて、汗を拭き/\、何気なく奥の間の方へ眼をやつたが、手前の部屋とのさかひ葭障子よししやうじを透して、其処に女が一人寝てゐるのが見えた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
仮現けげんの此さかひにてこそ聖慮安らけからぬ節もおはしつれ、不堅如聚沫ふけんによじゆまつの御身を地水火風にかへし玉ひつる上は、旋転如車輪せんでんによしやりんの御心にも和合動転を貪り玉はで、隔生即忘かくしやうそくまう焚塵即浄ふんぢんそくじやう
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
本町と北東仲町間の大通りを里俗広小路と云ひ、南方の中横町を杵屋横町、南方の上横町を常陸屋横町、満願寺長屋、広小路南角を恵比寿長屋、南方西仲町さかひを古着店と云ふ。”
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
及び現に空冥さかひことにしてゐる彼を切實に思ひ浮べることは出來なかつた。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
たやすく自然の美もて装はれたるさかひの薫はしきあたりに到りうべく——ここに快楽の裡に包まれたる霊魂たましひ——燃ゆるがごとき胸に響く愛国のしらべ、——ミルトンの運命と、シドニイの最期さいご
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
呉起ごき賢人也けんじんなりしかうしてこうくにせうにして、また彊秦きやうしん(九八)さかひじやうす。
彼は楊子をくはへながら、ぐ家主のにはさかひにある井戸端へ出て行つた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「なあおつう、さうだな」と身體からだよこけていつた。いた土間どまとのさかひつてはしらかげにランプのひかりからけるやうにして一獻酬けんしう女房等にようばうらにはかにおつぎのしりをつゝいて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
めぢのさかひに物も無し、唯遠長とほなが並木路なみきみち
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
幽暗不知のさかひに閉ぢこめて
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
北組、南組とは大手前おほてまへ本町通ほんまちどほり北側、船場せんば安土町通あづちまちどほり西横堀にしよこぼり以西は神田町通かんだまちどほりさかひにして、市中を二分してあるのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
めぢのさかひに物も無し、唯遠長とほながき並木路
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
佛蘭西フランスなる諸作家バルザツク、ユウゴオ、ゾラ、ドオデエの徒は、或は人情派のさかひを超えて、人間派に入れりともいふべからむが、これとてもまた近世の作家なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
野末遙けき森陰は、裾のさかひすぢ黒み
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あかりに透かして見れば、厩のはづれから、向つて左隣のさかひに掛けて、一面の竹藪たけやぶである。八は暫く様子を見てゐて、穿いてゐた下駄げたを脱いで、厩の簷下のきしたに置いて、竹藪の中に這入つた。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
野末遙けき森陰は、すそさかひすぢ黒み
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
竹藪の奥のつめまで来た。ここからは障子をはづしてある八畳の間が見える。ランプの光は、裏の畠のさかひになつてゐる、臭橘からたちの垣を照して、くもに溜まつた雨のしづくがぴかぴかと光つてゐる。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
西が知源寺ちげんじ摂津国町つのくにまち又二郎町またじらうまち、越後町、旅籠町はたごまち、南が大川、北が与力町をさかひとし、大手前から船場せんばへ掛けての市街は、谷町たにまち一丁目から三丁目までを東界ひがしさかひ上大かみおほみそ筋から下難波橋しもなんばばし筋までを西界にしさかひ
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)