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烏滸
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おこ
ふりがな文庫
“
烏滸
(
おこ
)” の例文
こう申しては、
烏滸
(
おこ
)
のようなれど、いつも道中には、供の者十四、五名は連れ、乗り換え馬の一頭も曳かせて歩く身分の者でござる。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
書についての私の経歴というようなものを、
烏滸
(
おこ
)
がましいのでありますが、一つの挿話としてお聞きをねがいたいのであります。
能書を語る
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
しかるに彼はこの志士が血の涙の金を
私費
(
しひ
)
して
淫楽
(
いんらく
)
に
耽
(
ふけ
)
り、公道正義を
無視
(
なみ
)
して、一遊妓の
甘心
(
かんしん
)
を買う、何たる
烏滸
(
おこ
)
の
白徒
(
しれもの
)
ぞ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
『後漢書』南蛮伝に交趾の西に人を
噉
(
くら
)
う国あり云々、妻を娶って美なる時はその兄に譲る。今
烏滸
(
おこ
)
人これなり。阿呆を烏滸という起りとか。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
芸術の鑑賞と批評——などと
鹿爪
(
しかつめ
)
らしく言うのも
烏滸
(
おこ
)
がましいが、優れたる探偵小説なるものは誰が読んでも面白いものでなくてはならない。
「二銭銅貨」を読む
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
▼ もっと見る
単に一人の口よりほしいまゝに、いづくの雲はそれのものの形に似たりなど云はんは、余りに
烏滸
(
おこ
)
にしれたるわざなるべし。
雲のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「ウム……言われて名乗るも
烏滸
(
おこ
)
がましいが、
練塀小路
(
ねりべいこうじ
)
に
匿
(
かく
)
れのねえ、
河内山宗俊
(
こうちやまそうしゅん
)
たァ俺のことだッ」とでもやられて見ろ、
仮令
(
たとい
)
その扇子が親譲りの
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
自分の
烏滸
(
おこ
)
のこころに引きくらべて、雪之丞が、現在、平気をよそおってはいながらも、内心では生きた気持もないものと信じ、さんざんになぶってから
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
わたし自身の心のうちの観念が
精
(
せい
)
ぜいよく考えて見ても、すでに
曖昧糢糊
(
あいまいもこ
)
たるものであるから、そんなことを書こうなどというのは
烏滸
(
おこ
)
がましき
業
(
わざ
)
だと思う。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
これにはわたくし、ほとほと感心してしまいまして、自分なんぞが監督したり心配したりするなんて
烏滸
(
おこ
)
がましいことだと、此方が
耻
(
はず
)
かしくなってしまいました
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「いかがでござりましょう! お殿様方に
御贔屓
(
ごひいき
)
願いますのも
烏滸
(
おこ
)
がましいようなむさくるしい宿でござりまするが、およろしくば御案内致しまするでござります」
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
世界は客観的理性の自己発展の世界となった。世界は、しかし
烏滸
(
おこ
)
がましいが、私はヘーゲルにおいても、絶対否定的自覚の立場に到らなかったとも思うのである。
デカルト哲学について
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
文献の有無を検討するにしても鶴見はまるで不案内である。こんな疑惑は
畢竟
(
ひっきょう
)
無知のさせる
烏滸
(
おこ
)
の沙汰である。そうであって欲しいと思って見ても、不審は解けない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
療
(
い
)
する術あるを聞きながら、ただに死ぬを待つこそ
烏滸
(
おこ
)
ならめ、その術ようせずば死なんのみ。
玉取物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そして彼らは父がかかる
怯懦
(
きょうだ
)
なる
器量
(
きりょう
)
をもって、
清盛
(
きよもり
)
を倒そうともくろんだのは、全く
烏滸
(
おこ
)
の沙汰であると放言しました。むろん、わしは彼らの話の
細部
(
さいぶ
)
は信じなかった。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
考えて見ればそれらの人間が大衆を云々するなどとは
烏滸
(
おこ
)
がましい、という風な論である。
文学の大衆化論について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
烏滸
(
おこ
)
がましうござりますが、従つて手前どもも、太夫様の
福分
(
ふくぶん
)
、
徳分
(
とくぶん
)
、
未曾有
(
みぞう
)
の
御人気
(
ごにんき
)
の、はや幾分かおこぼれを
頂戴
(
ちょうだい
)
いたしたも同じ儀で、
恁
(
か
)
やうな心嬉しい事はござりませぬ。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
夫
(
そ
)
れに私の商売なるものが——商売というのも
烏滸
(
おこ
)
がましいが、売文に依って口過ぎを為し——それも通俗物の小説などで——
生活
(
くらし
)
を営んで居ったので、何処へ住もうと
随意
(
まま
)
であった。
温室の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
探偵小説作家なぞと呼ばれて返事を差出すのは、如何にも
烏滸
(
おこ
)
がましい気がして赤面します。けれども元来が探偵小説好きなのですから、ソウ呼ばれますと何がなしに嬉しいことも事実です。
涙香・ポー・それから
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
自分から言うのは
烏滸
(
おこ
)
がましいが、現在自分の身柄がすでに貴族でないと誰が言う。日本に於て、殿様の階級に属して天下の直参を誇っていた身だ。それに田山白雲はまた一種の豪傑である。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
然し東京附近で冬を云々するのは
烏滸
(
おこ
)
がましい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「まだ人なみの
骨
(
こつ
)
がらも持たぬ
乳臭児
(
にゅうしゅうじ
)
の分際で、
宗規
(
しゅうき
)
を
紊
(
みだ
)
し、
烏滸
(
おこ
)
がましい授戒など受けると、この叡山の中にただはおかぬぞと」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
バイロン卿の例を引くのも
烏滸
(
おこ
)
がましいが、由来私は最も花々しく文壇へ出た一人であるとされてゐる。
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
妾が
烏滸
(
おこ
)
の
譏
(
そし
)
りを忘れて、
敢
(
あ
)
えて半生の経歴を
極
(
きわ
)
めて率直に少しく隠す所なく
叙
(
じょ
)
せんとするは、
強
(
あなが
)
ちに罪滅ぼしの
懺悔
(
ざんげ
)
に
代
(
か
)
えんとには
非
(
あら
)
ずして、新たに世と己れとに対して
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
烏滸
(
おこ
)
がましゅうござりますが、従って手前どもも、太夫様の福分、徳分、
未曾有
(
みぞう
)
の御人気の、はや幾分かおこぼれを頂戴いたしたも同じ儀で、かような心嬉しい事はござりませぬ。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「へへ、これはこれはお姫様、とんだ失礼を致しまして真っ平ご免遊ばしませ。なアんて云うのも
烏滸
(
おこ
)
がましいが
私
(
わっち
)
は泥棒の鼠小僧、お初お目見得に粗末ながら面をお目にかけやしょう」
善悪両面鼠小僧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
烏滸
(
おこ
)
がましくも小説として世間に面をさらす機会はなかったのである。
文芸時評
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
凡
(
およ
)
そ天下が広いというても。人の脳髄ホントに調べて。腹の立つほど簡単明瞭。奇妙キテレツ珍妙無類な。脳の作用を
見貫
(
みぬ
)
いた者なら。問わず語りで
烏滸
(
おこ
)
がましいが。ここに居ります
私
(
わたくし
)
ばっかり。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お手討も時代めいて些か
烏滸
(
おこ
)
だが、そうでもするほか、面目を保つ方法がない。そんなことを考えているうちに、自己的な才覚ばかりが発達して、どうでもやるほかはないという方へ気持が傾いた。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「拙者は、お奉行
榊原主計
(
さかきばらかずえ
)
殿のご懇望もだしがたく、
若輩
(
じゃくはい
)
の
烏滸
(
おこ
)
がましいとは存じながら、ご助勢に参った、
羅門塔十郎
(
らもんとうじゅうろう
)
と申しますもの」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これまで、民衆を指導するなどと考えていたのは
烏滸
(
おこ
)
の沙汰である。
全体主義への吟味:今日の民衆、知識人への課題
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「えい、この
烏滸
(
おこ
)
の
白痴者
(
たわけもの
)
め! そなた盗心を蔵しおるな!」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「お引き止め申して相済みません。実は、
烏滸
(
おこ
)
がましゅうございますが、さるお人に代って、お
願
(
ねげ
)
え申したいことがあるんでごぜえます」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
決して、ただ
悪
(
あ
)
しざまに申したり、
戯
(
ざ
)
れ
口
(
ぐち
)
を
弄
(
もてあそ
)
んだ次第ではありませぬ。どうぞ、
烏滸
(
おこ
)
がましい女の取越し苦労と、お聞き流し下さいませ
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「きょうまでおれは、土や水へ対して、
烏滸
(
おこ
)
がましくも、政治をする気で、自分の経策に依って、水をうごかし、土を
拓
(
ひら
)
こうとしていた」
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山村の一
儒生
(
じゅせい
)
が
烏滸
(
おこ
)
なる言とお怒りなくば、一言申してみましょう。——一体、治乱とは、この世の二つの
相
(
そう
)
かまた一相か。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ご家中の忠義者へ、まだ身素姓さえ告げぬ私の
烏滸
(
おこ
)
な腕立て。さぞ不快にごらんでしたろう。何とぞ、平におゆるしを」
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「諫言と申しては、一益ごときが、
烏滸
(
おこ
)
に聞えまするが、何故に、黒田官兵衛の
質子
(
ちし
)
を、にわかに、殺せとお命じにござりますか。一応、御熟考のうえで」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
怯
(
ひる
)
むな、怯むな。足利とんぼが血迷うて、執権どのへの畏れも忘れ、
烏滸
(
おこ
)
な手むかいに出たまでのこと。かまわん、かもうことはない。おれどもは公儀の御命を
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これ、これッ、忠次。何をいうか、何をッ。……かかる大戦に、そんな小策など、何の役に立とうぞ。さてさて汝は
烏滸
(
おこ
)
なる男かな、いで、一同も退出退出」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「途中で脚を折るような馬を持って、
烏滸
(
おこ
)
がましい口を叩くな。不吟味なる若者めが、以後、つつしめ」
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「では、
烏滸
(
おこ
)
な沙汰ですが、私が山僧にかわって聞きかじりの
請売
(
うけう
)
りを少しご案内いたしましょうか」
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
烏滸
(
おこ
)
がましいが、剣の心をもって、政道はならぬものか、剣の悟りを以て、安民の策は立たぬものか。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ろくな記憶も、語るべき内容もないのに、四半自叙伝などと
烏滸
(
おこ
)
なタイトルを掲げ、気恥かしいことだった。つい、云うまじき事まで云ってしまった気がしてならない。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
所詮
(
しょせん
)
、まだ若年者、御師範などとは、
烏滸
(
おこ
)
がましゅう思われますが、お相手という程なれば」
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御房の迷いと、拙者の迷いとは、だいぶ
隔
(
へだた
)
りがある。——われらごとき
武辺者
(
ぶへんしゃ
)
は、まだまだ迷いなどというのも
烏滸
(
おこ
)
がましい。ただ
余
(
あま
)
りに血に飽いて
荒
(
すさ
)
んだ心のやすみ場を
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
古鎧
(
ふるよろい
)
に
錆槍
(
さびやり
)
一筋
(
ひとすじ
)
持って駈けつけ参りました、
微衷
(
びちゅう
)
をおくみとり下さって、籠城の一員にお加えねがいとうござる。
烏滸
(
おこ
)
ながら一死を以て、亡君の御恩にお
応
(
こた
)
え申したいので……
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……いささか
烏滸
(
おこ
)
なりとも存じましたが、将来、わが小寺家と荒木家とは、同じ麾下と、同じ目的のために、一心
提携
(
ていけい
)
いたして参らねばならないことでもあり、
旁〻
(
かたがた
)
、帰国の途中
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
昨年
改易
(
かいえき
)
されて甲賀家のたえたことを
誌
(
しる
)
し、最後に、自分は仔細あって、阿波守の身辺に接しもし、また世阿弥の所在を知りたいこともあるので、
烏滸
(
おこ
)
ながら、公儀の隠密として
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……
烏滸
(
おこ
)
な言いぶんですが、この山寨にも兵三百、財物十車、そのほか武器馬匹もかなりある。それを
土産
(
みやげ
)
に、ぜひお仲間入りをえたいものと存じます。よろしく一つおとりなしを
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“烏滸”の解説
烏滸(おこ)とは、馬鹿げていてあるいは滑稽で人の笑いを買う様な有様を指す。
(出典:Wikipedia)
烏
漢検準1級
部首:⽕
10画
滸
漢検1級
部首:⽔
14画
“烏”で始まる語句
烏
烏帽子
烏賊
烏合
烏瓜
烏羽玉
烏有
烏丸
烏金
烏山