雲のいろ/\くものいろいろ
夏より秋にかけての夜、美しさいふばかり無き雲を見ることあり。都会の人多くは心づかぬなるべし。舟に乗りて灘を行く折、天暗く水黒くして月星の光り洩れず、舷を打つ浪のみ青白く騒立ちて心細く覚ゆる沖中に、夜は丑三つともおもはるゝ頃、艙上に独り立つて …