憂慮きづかひ)” の例文
それでも五人ごにんや十人ぐらゐ一時いつときわたつたからツて、すこれはしやうけれど、れてつるやうな憂慮きづかひはないのであつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……憂慮きづかひさに、——懷中ふところで、確乎しつかりけてただけに、御覽ごらんなさい。なにかにまぎれて、ふとこゝろをとられた一寸ちよいと一分いつぷんに、うつかり遺失おとしたぢやありませんか。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一人ひとりはふしていたところで、留守るすやまからさるて、沸湯にえゆ行水ぎやうずゐ使つかはせる憂慮きづかひけつしてないのに、たれかついてらねばとなさけから、家中うちぢう野良のらところを、よめ一人ひとりあとへのこして
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや、さまでに憂慮きづかひあるな、きみ御戲おたはむれさふらはむ、我等われらおとりなしまをすべし」といふ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
道中だうちう——旅行たび憂慮きづかひは、むかしからみづがはりだとふ。……それを、ひとくと可笑おかしいほどにするのであるから、行先々ゆくさき/″\停車場ステーシヨンる、おちやいてる、とつても安心あんしんしない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いま憂慮きづかひなし。大塚おほつかより氷川ひかはりる、たら/\ざかは、あたか芳野世經氏宅よしのせいけいしたくもんについてまがる、むかし辻斬つじぎりありたり。こゝに幽靈坂いうれいざか猫又坂ねこまたざか、くらがりざかなどふあり、好事かうずたづぬべし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
留守るすには、年寄としよつたこしたない與吉よきち爺々ちやん一人ひとりるが、老後らうごやまひ次第しだいよわるのであるから、きふ容體ようだいかはるといふ憂慮きづかひはないけれども、與吉よきちやとはれさき晝飯ひるめしをまかなはれては
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うろこひかつても、それ大蛇だいじやでも、しづかなあめでは雷光いなびかり憂慮きづかひはない。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うへは、とおあきをとこのせりめた劍幕けんまくと、はたらきのないをんなだと愛想あいそかされようとおも憂慮きづかひから、前後ぜんご辨別わきまへもなく、棒縞ぼうじまあはせいですつもりで、かげではあつたが、かきそと
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)