向側むかふがは)” の例文
うしても、ありや萬里ばんり長城ちやうじやう向側むかふがはにゐるべき人物じんぶつですよ。さうしてゴビの沙漠さばくなか金剛石ダイヤモンドでもさがしてゐればいんです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と云つた母の顔にもうつくしい血がのぼつた。滿はその向側むかふがはの畑尾の傍へ行つてしまつた。鏡子はまた横になつてしまつた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さむ時分じぶんだからいけなかはたゞ薄濁うすにごりによどんでゐるだけで、すこしも清淨しやうじやうおもむきはなかつたが、向側むかふがはえるたかいし崖外がけはづまでえん欄干らんかんのある座敷ざしきしてところ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
国府津で一緒になつた新聞記者が二人向側むかふがはに腰を掛けて居るので、この人にはやまひのためにはなしが出来ないと断つてあるのであるから、急に元気いたらいやな気持をおこさせるに違ひないと思つて
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
島を越して向側むかふがはの突き当りが蓊鬱こんもりとどすぐろひかつてゐる。女はおかうへから其くら木蔭こかげを指した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
滿は向側むかふがは従兄いとこに話しかけた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「御神さん、電車へ乗るなら、此所こゝぢや不可いけない。向側むかふがはだ」と教へながらあるした。神さんは礼を云つていてた。代助は手探てさぐりでもする様に、くらい所を好加減いゝかげんあるいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ微笑びせうしながら、急忙せはしいとほりを向側むかふがはわたつて、今度こんど時計屋とけいやみせのぞんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「どうぞ」と云ひながら椅子をすゝめた儘、自分は寝台ベツド向側むかふがはまはつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)