他處よそ)” の例文
新字:他処
殊更の廻り道して我が門を他處よそに、やみがたき時は車を飛ばせて女子一人に逢はじの掛念、お笑止や我れゆゑ天地を狹しと思すか
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その茂みの中には他處よそから引かれたのでせう、きれいな岩を傳うて愛らしい瀧となつて流れ落ちてゐました。
をとこのそれくらゐはありうちと他處よそゆきには衣類めしものにもをつけてさからはぬやうこゝろがけてりまするに、たゞもうわたしこととては一から十まで面白おもしろくなくおぼしめし
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
假初ながら十日ごしも見馴れては他處よその人ともおもはれぬに、歸るに家なしとかいひし一言のあやしさをおもへば、いづれ普通なみならぬ悲しき境界さかいをさまよふにこそ
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
むかしのとほりでなくとも田中屋たなかや看板かんばんをかけるとたのしみにしてるよ、他處よそひと祖母おばあさんをけちだとふけれど、れのため儉約つましくしてれるのだからどくでならない
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
絶頂ぜつちやうなかわるかつたときは、二人ふたりともにそむそむきで、そとへいらつしやるに何處どこへとふたことければ、行先ゆくさきをいひかれることい、お留守るす他處よそからお使つかひがれば
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一日お目おめにかゝらねばこひしいほどなれど、奧樣おくさまにとふてくだされたらうでござんしよか、たれるはいやなり他處よそながらはしたはしゝ、一トくちはれたら浮氣者うわきものでござんせう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その御隱居さま寸白すばくのお起りなされてお苦しみの有しに、夜を徹してお腰をもみたれば、前垂でも買へとて下された、それや、これや、お家は堅けれど他處よそよりのお方が贔屓になされて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その御隱居ごいんきよさま寸白すばくのおおこりなされておくるしみのありしに、とほしておこしをもみたれば、前垂まへだれでもへとてくだされた、それや、これや、おうちかたけれど他處よそよりのおかた贔負ひいきになされて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小川町をがはまちのお店をお廢めなされたといふ噂は他處よそながら聞いても居ましたれど、私も昔しの身でなければ種々いろ/\と障る事があつてな、お尋ね申すは更なること手紙あげる事も成ませんかつた
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小川町をがはまちのおみせをおめなされたといふうわさ他處よそながらいてもましたれど、わたしむかしのでなければ種々いろ/\さわことがあつてな、おたづまをすはさらなること手紙てがみあげることなりませんかつた
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへみたやうのが百にん中間なかまあつたとてちつともうれしいことい、きたいはう何方どこへでもきねへ、れはひとたのまないほんうでッこで一龍華寺りうげじとやりたかつたに、他處よそかれては仕方しかた
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いまつからびること出來できなくては仕方しかたい、其樣そんこと他處よそうちでもしては不可いけないよとけるに、れなんぞ御出世ごしゆつせねがはないのだから他人ひとものだらうがなんだらうがかぶつてるだけがとく
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とても/\旦那樣だんなさまのやうな邪慳じやけんかたのおではない、これはわたし一人ひとりものだとめてまするに、旦那だんなさまが他處よそからでもおかへりになつて、不愉快ふゆくわいさうなおかほつきで此子これまくらもとへおすわあそばして
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこねもして愛想あいそづかしのたねにもならばはぬにまさらさぞかしきみさまこそ無情つれなしともおもこゝろに二不孝ふかうらねど父樣とゝさまはゝさまなんおほせらるゝとも他處よそほかの良人をつともつべき八重やへ一生いつしやう良人をつとたずとふものからとはおのづかことなりて關係かゝはることなく心安こゝろやすかるべし浦山うらやましやと浦山うらやまるゝわれ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)