事情じじょう)” の例文
これをいて、事情じじょうらぬひとたちは、金持かねもちや、家主やぬしにありそうなことだと、した青服夫婦あおふくふうふへ、同情どうじょうしたかもしれません。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
勝氏は真実しんじつの攘夷論者に非ざるべしといえども、当時とうじいきおいむを得ずして攘夷論をよそおいたるものならん。その事情じじょうもって知るべし。
でもあとになって、それはある悲しい事情じじょうからはじめてわかった。いずれわたしの話の進んだとき、それを言うおりがあるであるう。
わたくし幾度いくたび竜宮界りゅうぐうかいまいり、そして幾度いくたび御両方おふたかたにおにかかってりますので、幾分いくぶんそのへん事情じじょうにはつうじてるつもりでございます。
無論内面の事情じじょうを批判したのでもなく、それを不当と思うのでもなく、一種の偶然を容認ようにんしただけである。ところが妻は中々あきらめ切れない。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
神官たちが垢離堂へむかえに立ったあとで、右近はやっと一学のまえへでてきた。そして、あからさまに事情じじょうをのべて謝罪のとりなしをたのむのだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ツルがかくしたようにみせかけたあの花についての事情じじょうと何かていてあわれである。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
夕方父が帰ってばたにたからぼくは思い切って父にもう一学校の事情じじょうを云った。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
誰方どなたにも、只今、一日五千フラン限りとなっていますので、事情じじょう御諒承ごりょうしょうねがいます」
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
発見者はっけんしゃは、老人ろうじんうちのすぐとなりにんでいて、去年きょねんあたり開業かいぎょうした島本守しまもとまもるという医学士いがくしだつたが、島本医師しまもといしは、警察けいさつ事件じけん通報つうほうすると同時どうじに、大要たいようつぎのごとく、その前後ぜんご事情じじょうべた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
けだし論者のごとき当時の事情じじょうつまびらかにせず、軽々けいけい他人の言によって事を論断ろんだんしたるがゆえにその論の全く事実にはんするも無理むりならず。
このことは、そのそのはたらいてらさなければならぬものには、どういう事情じじょうがあっても、まんは、無心むしんをたのむになれなかったのでしょう。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みぎ事情じじょう指導役しどうやくのおじいさんからつたえられたときわたくしはびっくりしてしまいました。わたくし真紅まっかになって御辞退ごじたいしました。——
ところでそれがひょんな事情じじょうから、この女の人が、じつはやしなおやでしかなかったということがわかったのだ。
で、こんどは如才じょさいなく、はなしの鉾先ほこさきをかえて、なんでぶっそうなのか、事情じじょうをさぐってみようと考えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外国の事情じじょうに通ぜざる日本人はこれを見て、本国政府の意向いこう云々うんぬんならんとみだり推測すいそくして恐怖きょうふいだきたるものありしかども
けれど、良吉りょうきちの一事情じじょうがあって、そのくるとしにこのむらからほかのむらうつらなければならなくなりました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
え、まだわたくし臨終りんじゅう前後ぜんご事情じじょうがはっきりしていないとっしゃるか……そういえばホンにそうでございます。
こんなふうにしてえきれずにいるうちに、とうとうぐうぜんの事情じじょうが、わたしに思い切ってできなかったことをさせることになった。それはこうであった。
「——見うけるところ、良人もあろうし、幾人いくにんかの子供もあろう人妻ひとづまではないか。なぜそんな短気たんきなことをいたす。くるしい事情じじょうがあろうにもしろ、浅慮千万せんりょせんばん……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ひいてしまったのか? しかし、前後ぜんご事情じじょうけばしかたがないことだ。」と、高等官こうとうかんはいいました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでついわたしの好奇心こうきしんたすことなしに、この町を去ろうとしていたとき、ひょんな事情じじょうから、わたしは坑夫こうふのさらされているあらゆる危険きけんを知るようになった。
ところが事情じじょうがそういうわけでは、わたしはおくびょうにならずにはいられなかった。
事情じじょういたら、いずれも、どくなものばかりのようにおもわれる。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからかれは事情じじょう説明せつめいして、ふぶきの中にじこめられたことや、おおかみにこわがってジョリクールがかしの木にとび上がったこと、そこで死ぬほどこごえたことを話した。
そのあいだにどういう複雑ふくざつ事情じじょうがあったことかしれません。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)