中庭なかには)” の例文
たゞかん中庭なかにはにはあのどるめんのちひさいものを、原状げんじようのまゝつてゑてありますから、後程のちほどには御覽下ごらんください。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
廊下づたひに中庭なかにはして、おくて見ると、ちゝ唐机とうづくえまへすはつて、唐本とうほんてゐた。ちゝは詩がすきで、ひまがあると折々支那人の詩集をんでゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あさまだきは、旅館りよくわん中庭なかには其處そこ此處こゝを、「おほきな夏蜜柑なつみかんはんせい。」……親仁おやぢ呼聲よびごゑながらいた。はたらひと賣聲うりごゑを、打興うちきようずるは失禮しつれいだが、旅人たびびとみゝにはうたである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たれしも想像そう/″\られるとほり、校舍こうしや新築しんちくでありながら全部ぜんぶつぶれてしまつた。わづかにもつのがれた校長以下こうちよういか職員しよくいんふようにして中庭なかにはにまでると、目前もくぜん非常ひじよう現象げんしようおこはじめた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
三の、小座敷、小亭、又は數奇屋鞠場まりばまであり、中庭なかには推して知るべし。
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
中硝子なかがらす障子しやうじごしに中庭なかにはまつ姿すがたをかしと絹布けんぷ四布蒲團よのぶとんすつぽりと炬燵こたつうちあたゝかに、美人びじんしやく舌鼓したつゞみうつゝなく、かどはしたるひろひあれは何處いづこ小僧こそうどん雪中せつちゆうひと景物けいぶつおもしろし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わが家の狭き中庭なかにはを照らしつつかげり行く光をかなしみにけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
シモオヌよ、雪はそなたのいもうと中庭なかにはてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
景色けしきなかを、しばらくして、もんやなぎくゞり、帳場ちやうばらつしやい——をよこいて、ふか中庭なかには青葉あをばくゞつて、べつにはなれにかまへた奧玄關おくげんくわんくるまいた。旅館りよくわん合羽屋かつぱやもおもしろい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひとつぼほどの中庭なかにはのせまきにもいのちたたか昆虫こんちゆうが居り
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
病院の中庭なかには驛傳えきでん馭者ぎよしや來り
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
湯氣ゆげあたゝかく、したなる湯殿ゆどの窓明まどあかりに、錦葉もみぢうつすがごといろづいて、むくりと二階にかいのきかすめて、中庭なかにはいけらしい、さら/\とみづおとれかゝるから、内湯うちゆ在所ありかかないでもわかる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)