一団いちだん)” の例文
旧字:一團
初秋の空は晴れわたって、午後のざしはこのおさな一団いちだんを、白くかわいた道のまん中に、異様さをみせてうしろかららしていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
うすると、こゝろきざんで、想像さうざうつくげた……しろ俘虜とりこ模型もけい彫像てうざうが、一団いちだんゆきごとく、沼縁ぬまべりにすらりとつ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
金博士が、砲弾にけて通ったんだろうか。わが印度インドでは、聖者せいじゃが、一団いちだん鬼火おにびに化けて空を飛んだという伝説はあるが、人間が砲弾になるなんて……
歌麿の裸体画には解剖の根柢完全に具備せられたれどその一抹いちまつ一団いちだんうちに節略せられたる裸形は書体風カリグラフィックの線によりてすべて局部の細写さいしゃを除きたるがため
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それでまた珍らしくなって、いったん伏せたのをまた開けて見ると、ふと仮名かなの交らない四角な字が二行ほど並んでいた。それにはかぜ碧落へきらくいて浮雲ふうんき、つき東山とうざんのぼってぎょく一団いちだんとあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
耀かがやく沼は彼らを一団いちだんほのほちぢむ。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それでも、それがアクチニオ四十五世の一団いちだんであることを認めた。博士は急に元気づき、その方へ足を早めていった。博士は、間もなく高い壁に行方をはばまれた。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もすそひらいて、もだくるしむがごとくにえつゝ、本尊ほんぞんたるをんなざうは、ときはや黒煙くろけむりつゝまれて、おほき朱鷺ときかたちした一団いちだんが、一羽いちはさかさまうつつて、水底みなぞこひとしく宿やどる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
耀くぬまは彼らを一団いちだんの焔と縮む。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)