黄菊くわうぎく)” の例文
唯、それを俗人の穿鑿せんさくにまかせるのは、彼がどんな心もちでゐようとも、断じて許さうとは思はない。そこで彼は、眼を床の紅楓こうふう黄菊くわうぎくの方へやりながら、吐き出すやうにかう云つた。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼の書斎には石刷いしずりを貼つた屏風びやうぶと床にかけた紅楓こうふう黄菊くわうぎく双幅さうふくとの外に、装飾らしい装飾は一つもない。壁に沿うては、五十に余る本箱が、唯古びた桐の色を、一面に寂しく並べてゐる。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)