麻鞋おぐつ)” の例文
そのとき、一人のせた若者が、生薑しょうがを噛みつつ木槵樹もくろじゅの下へ現れた。彼は破れた軽い麻鞋おぐつを、水に浸ったたわらのように重々しく運びながら、次第に草玉の茂みの方へ近か寄って来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
若者は、月の光りに咲き出た夜の花のような卑弥呼の姿を、茫然ぼうぜんとして眺めていた。彼女は大兄に微笑を与えると、先に立って宮殿の身屋むやの方へ歩いていった。若者は漸く麻鞋おぐつを動かした。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)