鰹船かつおぶね)” の例文
この漕ぎ手に白羽の矢が立ったのは、鰹船かつおぶねで鍛え上げた三上と、舵取かじとりの小倉とであった。三上は低能であった。小倉はおとなしかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「神戸へ参ったのも、全くその方の用向なので。石油発動機とか何とか云うものを鰹船かつおぶねえ付けるんだとかってねあなた」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そら、あねさん、この五月、三日流しの鰹船かつおぶねで二晩沖で泊ったっけよ。中の晩の夜中の事だね。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃ鰹船かつおぶねの方はもう止したの」と、今まで黙っていた御米が、この時始めて口を出した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼はきわめて幼い時から、海べへ出て、漁夫の手伝いをした。そして自分の食う分は五つぐらいの時分から自分でかせいだ。そして彼は小学校へ行く代わりに鰹船かつおぶねで太平洋に乗り出した。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「そりゃ安さんの計画が、口でいう通りうまく行けば訳はないんでしょうが、だんだん考えると、何だか少し当にならないような気がし出してね。鰹船かつおぶねもあんまりもうからないようだから」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)