魅惑的みわくてき)” の例文
副園長の声に、はッと目をあげると、そこにはいかにも暖室だんしつらしい感じのする肉色の丈夫な建物が、魅惑的みわくてきな秘密を包んで二人の前に突立っていた。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
物越しは、物の影のやうに靜かですが、青白い顏にも、異常に赤い唇にも、妙に魅惑的みわくてきなところのある女です。
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
マルソオは、それに、第一、なぜともわからず、不意に顔を赤らめるという魅惑的みわくてきな手段をもっていて、それでまた、彼は、少女のようにだれかれから好かれるわけなのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
実になんとも言えず魅惑的みわくてきな、高飛車たかびしゃな、愛撫あいぶするような、あざ笑うような、しかも可愛かわいらしい様子があったので、わたしはおどろきと嬉しさのあまり、あやうく声を立てんばかりになって
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
超現実に美しく魅惑的みわくてきな金魚は、G氏が頭の中にえがくところのゆめの魚ではなかった。交媒を重ねるにつれ、だんだん現実性を備えて来た。しかし、そのうちG氏の頭の方が早くも夢幻化むげんかして行った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その顔が恐ろしく魅惑的みわくてきであった。
女妖:01 前篇 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)