髑髏しゃりこうべ)” の例文
もとは、佐倉の佐藤塾で洋方医の病理解剖を勉強していたが、墓から持って来たたったひとつの髑髏しゃりこうべ唯一ゆいつの標本。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「こちとらとは少し頭の寸法が違うんだ。右大将うだいしょう頼朝公よりともこう髑髏しゃりこうべと来ているんだから」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
文覚もんがく上人が、頼朝に源家再興の旗印を上げさせるきっかけをつくったという、例の義朝の髑髏しゃりこうべは、実は偽物であった。唯、頼朝に謀叛心を起させようという、上人の計略であったのだ。
時に青空に霧をかけた釣鐘が、たちまち黒く頭上を蔽うて、破納屋やれなやの石臼もまなこが窪み口が欠けて髑髏しゃりこうべのように見え、曼珠沙華まんじゅしゃげも鬼火に燃えて、四辺あたり真暗まっくらになったのは、めくるめく心地がしたからである。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)