飲食のみくひ)” の例文
旧字:飮食
向うの広間に置いた幾つもの衝立ついたての蔭に飲食のみくひしてゐる、幾組もの客を見渡しつゝ、お文はさも快ささうに、のんびりとして言つた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
ついと軒を潜つて入ると、炉辺ろばたには四五人の船頭、まだ他に飲食のみくひして居る橇曳そりひきらしい男もあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
幾ら牛の乳でも藷焼酎のやうに煽飲あふりつけては、結句身の為めにならないといふ事をさとしたいからだ。仔牛を見よ、物を適宜に飲食のみくひするといふ事にかけては、総領事よりは余程悧巧である。
丑松は飲食のみくひしたものゝ外に幾干いくらかの茶代を置いての饂飩屋を出た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一ぜんめし、御酒肴おんさけさかな、笹屋、としてあるは、かねて敬之進と一緒に飲んだところ。丑松の足は自然とそちらの方へ向いた。表の障子を開けて入ると、そここゝに二三の客もあつて、飲食のみくひして居る様子。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)