面子めんつ)” の例文
この二ヶ条は一時的な面子めんつの問題、和議のとゝのつた後では軍兵の撤退も王子の返還も面倒のいらぬことだから、急ぐことはない。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「訊かれもしないことについてしゃべらないでもいいでしょう。当局には当局で、お考えもありまた面子めんつもあるのでしょう」
軍国の少年には面子めんつがあった。彼は、母のことを極力世間にかくした。大吉にすれば、母の言動はなんとなく気になった。ずっとまえにもこんなことがあった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
しかし、この御幸は思わぬところから横槍よこやりが入って一時延期された。厳島神社に先をこされた叡山衆徒の憤激である。面子めんつをつぶされた衆徒どもは、先例をたてにとった。
我国の威厳をたかむると共に相手国の面子めんつをも保たしめた聖君子的外交で在したのであって、この理想的外交の結果、日本と隋との国交は滑らかにつづき、隋滅びて唐となっても、その国交は継続され
日本上古の硬外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女人をして惚々ほれぼれさせないではいない有名なる巨躯紅肉きょくこうにく棒鱈ぼうだらのように乾枯ひからびて行くように感ぜられるに至ったので、遂に彼は一大決心をして、従来の面子めんつを捨て、忍ぶべからざるを忍び