陰々滅々いんいんめつめつ)” の例文
何となく、火色のわる短檠たんけいの灯を見つめて、陰々滅々いんいんめつめつこだまする犬の声をかぞえるように聴き耳をたてていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……だが、もし自分が、柴田と反争したまま、また主君のお叱りをうけたまま、この城門をしめこんで、陰々滅々いんいんめつめつと、鳴りをひそめているとしたら——。どうだな。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わけて八幡宮の東の鳥合とりあいヶ原は、その上覧桟敷さじきやら御愛育のたくさんな御犬寮もある所なので、一犬の吠えが万犬の吠えをよび、その諸声もろごえは、鎌倉の海のとどろも打消して、陰々滅々いんいんめつめつ
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
居眠るまえまでは、巨大な墓場のようだった城中の陰々滅々いんいんめつめつな気が、一転して、鼓の音や、笑い声に変って、どこやらになごやかな温かさすらただよっている不思議を——急に発見したのであった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)