それらのあらゆる論告のはしくれは、かくのごとく一掃されて灰燼かいじんになる。すべてのへりくつは論理の鎧袖一触がいしゅういっしょくで解決される。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
鮭かも知れないと思う途端に、沖へのして、太い人造を鎧袖一触がいしゅういっしょくという威勢で切って行ってしまった。
河鱸遡上一考 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
肉体が疲れて意志を失ってしまったときには、鎧袖一触がいしゅういっしょく、修辞も何もぬきにして、袈裟けさがけに人を抜打ちにしてしまう場合が多いように思われます。悲しいことですね。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「かんが川は、筑摩ちくまの支流で、越ゆるに難儀なほどではない。城兵の半分を向けても、おそらく鎧袖一触がいしゅういっしょくでしょう。——むしろ、近々と引き寄せて、全力でこれを撃つべきです」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さすがは!」と、寂心はめそやした。「早やお胸にそこまでの御寸法があるものを、いらざることを申しあげました。仰せのごとく、鎧袖一触がいしゅういっしょく、もはや恐れるものはございませぬ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この勝頼が眼には織田の三万は、声のみの虚勢、徳川の七、八千などは、鎧袖一触がいしゅういっしょくにも値せぬ。何をさまで怖れるか、勝頼にはせぬ。……跡部あとべッ、大炊介おおいのすけッ、そちの思案はどうだ、はばからずいえ
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)