銀杏返いちやうがへ)” の例文
銀杏返いちやうがへしにつた小さなませた子守が、ひそかに言つて眉をひそめた。するとそこに目のくるりとした小さな子が、不意に聲高く叫んだのである。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
薄暗いランプの光に照されて透通すきとほるやうに白い襟足えりあしに乱れかゝつて居る後毛おくれげが何となくさびしげで、其根のがつくりした銀杏返いちやうがへしが時々ふるへて居るのは泣いてゐるのでもあるのか
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
それは洲崎町のトある角の、渠が何日でも寄る煙草屋の事で、モウ大分借が溜つてるから、すぐ顔を赤くする銀杏返いちやうがへしの娘が店に居れば格別、口喧くちやかましやの老母ばばあが居た日にはどうしても貸して呉れぬ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)