釘舌ボールト)” の例文
円鈕ノッブを前に押しながら、開く戸に身を任せて、音なき両足を寄木よせきゆかに落した時、釘舌ボールトのかちゃりとね返る音がする。窓掛に春をさえぎる書斎は、薄暗く二人を、人の世から仕切った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
丹念に引く線はようやくしげくなる。黒い部分はしだいに増す。残るはただ右手に当る弓形ゆみなりの一ヵ所となった時、がちゃりと釘舌ボールトねじる音がして、待ち設けた藤尾の姿が入口に現われた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)